今日は、皆さんからよく聞かれる質問の1つ、「機長になるまでの道のり」を説明します。
一般的に「機長」は凄いというイメージですが、具体的に副操縦士と機長の違いをあまり知られていません。
ある程度、副操縦士として経験を積んだら自動的に「機長」になれると思っていらっしゃる方も多いです。
私はパイロットとして働いている旦那が身近にいるので色々話を聞いて知っていますが、なかなか機長になるまでの道のりは長く大変です。
副操縦士として働いている間が責任もなく楽しいかもしれませんね。
でも、みんな口を揃えて「早く機長になりたい」と言います。
機長は最高責任者なので全ての責任を負わなければなりませんが、機長になると「自由」を手に入れる事ができます!
副操縦士の間は機長にお伺いを立てなければなりませんが、機長になったら全て自分の思い通りのFLIGHTができます。
その代わりに何があっても全責任を取ります。
とある機長は、「サラリーマンだけど個人事業主みたいなもんだ」とおっしゃっていたそうです。
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パイロットに必要な資格
そもそも「パイロット」とは機長と副操縦士両方の事を言います。
まず、パイロットになる為の基礎訓練が1〜2年あり、パイロットとして就職するまでに「事業用操縦士」という国家資格を取得しておく必要があります。
また、「第一種航空身体検査証明書」や電波法に基づく「航空無線通信士」の資格も必要です。
(自社養成パイロットであれば入社時に資格は不要)
そして、航空会社に入社し、副操縦士任用訓練(技能訓練、路線訓練)が約1年あります。
副操縦士として昇格するまでに、特定の機種を操縦する為の「型式証明」を取得し、社内審査を経て、副操縦士としてFLIGHTする事ができます。
ここまで本当に大変です。
やっとパイロットとして大空を飛べるようになっても、そこがゴールではありません。
パイロットになってからも定期的に訓練や審査もありますし、航空身体検査にも合格しなければなりません。
しかも、機種が変わる度に訓練もあります。
そして、最終目標は「機長」です。
経験を積んで機長に昇格するという流れですが、機長になるまでの道のりは本当に長いですね。
定期運送用操縦士(ATPL)の資格が必要
まず、「定期運送用操縦士(ATPL)」の資格が必要です。
これは、飛行機のライセンスの一種で、エアラインの機長として飛行機を操縦する為の免許です。
国家資格なので審査があります。
航空従事者資格の最高位のライセンスです。
筆記試験(航空従事者技能証明等学科試験)
筆記試験は、航空従事者技能証明等学科試験という試験で、全国の約260会場で受験する事ができます。
実際には筆記試験ではなく、2023年11月からCBT(Computer Based Testing)となり、会場に設置されたパソコンを通じて回答する試験となっています。
試験は2日間あり、科目は航空法規、航空気象、空中航法、航空工学です。
学科試験は年に6回開催されており、受験料は7,700円です。
科目合格もあり、もし不合格になった科目はもう一度受験して受かればOKです。
旦那は全ての科目に合格しました。
実技訓練・審査
次は、ATPLの訓練です。
約半年間、教官やチェッカーと呼ばれる役職の機長とFLIGHTを行い、ATPLの訓練に入れるレベルにあるかどうかの審議が社内で行われます。
JAL、ANAなどは実技訓練及び審査は社内で行うことができます。
初めに座学がありますが、新しい事を学ぶわけではありません。
機長になる為に必要な知識は全て知っている事が前提で、一緒に訓練に入った人と知識を確認する為の時間です。
その後、ATPLの訓練に入ります。
あらゆる不測の事態が生じても適切に処理をして飛行機を安全に着陸させる技術が求められているので、全てシミュレーターで行います。
技能審査は、試験官が受験者と同乗して実際に飛行し、受験者の技量を見て審査が行われます。
内容は離着陸操作、計器飛行能力、緊急時の対応力、FLIGHT全体の運航管理能力などです。
知識の確認の為、口述もあります。
この資格を取得した人が、機長昇格訓練に入ります。
ATPLのライセンスを取得後、路線訓練
機長昇格訓練はトータル1年くらいあります。
ATPLのライセンスを取得したら、実際に飛行機に乗って路線訓練を行います。
この訓練は、お客様を乗せた定期便で行います。
シミュレーターではお客様は乗っていませんし、管制官、CA、会社とのやり取りはリアルにできません。
しかし、路線訓練では実運航なので何が起こるか分かりません。
この路線訓練が最も最難関だそうです。
最近の流れとしては、技量だけでなくCRMが重視されています。
その便が訓練便かどうかはお客様には分かりません。
路線訓練を大体3〜4ヵ月行った後、国土交通大臣による機長認定(審査)を受けなければ機長として独り立ちできません。
ATPLの技能審査、国による機長認定審査、会社による機長昇格審査の3つすべてに合格した人だけが機長として乗務をする事ができます。
機長昇格までの大まかな流れはどの航空会社も同じです。
機長になったその先は?
もちろん、機長になったらゴールでではなく、それからまた経験を積んでいく必要があります。
あくまでも最終目標が「機長」の資格であり、むしろスタートかもしれませんね。
機長昇格後はしばらく楽しくFLIGHTできるでしょう。
そして、数年経ったら、後輩育成に携わったりその先は管理職となるのでしょう。
管理職とは、教官や査察などの役職です。
パイロットは一生勉強していかなければならない職業ですね。
旦那がどのようなパイロット人生を歩んでいくのか分かりませんが、まずは、機長になるまで全力で支えて行こうと思います!